-prologue-
のり子さんの生活は「ふつう」だ。普通というのは、特別に変わったことをしているわけではないということ。毎日、ごはんを食べたり、掃除をしたり、お風呂に入ったり、買い物に行ったりする。人は赤ちゃんのときから一日一日成長する。色々なことが一人でだんだんできるようになる。得手不得手はあっても、遅い早いはあっても、一人で生活できるようになる。
人はできるようになると、どうやってできるようになったか、できるようになるまで、どんなに大変だったか、細かいことは忘れてしまうことが多い。特に生活については、どうやって一人でボタンが留められるようになったか、などを細かく覚えている人は少ない。多くの人が、生まれてから何年もかけて、色々なプロセスを経て、ようやく普通に生活できるようになったということも思い出さないまま、とても長い年月を過ごす。
それからしばらくすると、一人で全部、普通の生活をするのが、大変になってくる。普通にできていたことでも、一生懸命、一つ一つ、がんばらないとできなくなってくるときがくる。昨日は、ササっとできていた小さなことが、急に大変になるときが来る。それでも、自分にできることを工夫しながら、一つ一つに前向きに取り組みながら、一人で普通に暮らしているのり子さんの日々を切り取った物語。
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